日本版DBSで「スタッフ本人が戸籍を出す」って本当?マイナンバーカードがない人・費用・プライバシーの不安にお答えします
「スタッフに『戸籍を取ってきて』なんて、どう切り出せばいいんだろう……」
日本版DBS(こども性暴力防止法)の準備を進めている経営者の方から、こんな声をよく聞くようになりました。
犯罪歴の確認(国の言葉では「犯罪事実確認」)には、スタッフ一人ひとりの戸籍が必要です。そして2026年9月29日、こども家庭庁が「戸籍の取り方」について自治体向けの通知を出し、あわせてQ&Aも改訂しました。
その中には、こんな一文があります。
確認対象となる従事者が自らの戸籍情報を取得し、こども家庭庁に提出することとなります。
(こども家庭庁支援局長通知・2026年9月29日)
戸籍を取って国に出すのは、事業者ではなくスタッフ本人です。だからこそ、事業者の「頼み方」と「段取り」が大事になってきます。
この記事では、
- スタッフは何を、どうやって出すのか
- マイナンバーカードがない人はどうするのか
- 費用は? 戸籍の中身は見られる?
といった、現場で必ず出てくる疑問にお答えします。
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日本版DBSの戸籍提出とは?
日本版DBSの戸籍提出とは、犯罪歴の確認を受けるスタッフが、本人確認のために自分の戸籍情報を国(こども家庭庁)へ提出する手続きのことです。原則はスタッフ本人がシステムで直接出します。
なぜ戸籍なのか。国が法務省の記録と照らし合わせるとき、「この人は間違いなく本人か」を確かめる必要があるからです。結婚や養子縁組などで名字が変わっていても確実に照合できるよう、生まれてから今までの、すべての戸籍が必要とされています。
「全部って、結婚前の実家の戸籍も?」と驚かれるかもしれませんが、原則としてそうです。ここが、スタッフにとって一番「えっ」となるポイントかもしれません。
手続きの流れ:事業者がやること、スタッフがやること
手続きはすべて、国の専用システム「こまもろうシステム」の上で進みます。事業者とスタッフ、それぞれの役割はこうです。
| 順番 | 誰が | やること |
|---|---|---|
| 1 | 事業者 | GビズIDを取り、こまもろうシステムに事業者として登録する |
| 2 | 事業者 | 確認するスタッフの名前とメールアドレスを登録する(認定事業者は認定を受けた後) |
| 3 | スタッフ | 届いたメールから、自分のアカウントを作る(マイナンバーカード等で本人確認) |
| 4 | 事業者 | 仕事を始める予定日など、申請に必要な情報を入力する |
| 4と並行 | スタッフ | 戸籍情報を登録する(3が済めば、4を待たずに進められる) |
気をつけたいのは、スタッフのアカウント作成は本人にしかできない点です。Q&Aでも、休職中の人も含めて本人が登録する必要があるとされています。「事務の担当者がまとめて代わりに……」はできません。
ただし、戸籍の書類そのものについては、スタッフ本人が希望すれば事業所を通して提出することもできます。この場合、事業所は断ってはいけないと法律で決まっています。「自分でやるのは不安だから、会社経由で出したい」と言われたら、受ける準備をしておきましょう。
マイナンバーカードがあれば、スマホで完結
戸籍の提出は、マイナンバーカードがあればぐっと簡単になります。
スマートフォンのアプリ(マイナアプリ)を使って、マイナンバーカードをスマホにかざすだけ。役所に行かなくても、システム上で戸籍情報を出せる仕組みです。
ただし、国のQ&Aにも「一部対応していない戸籍情報等もあります」と書かれているとおり、すべての戸籍がこれで取れるわけではありません。
マイナンバーカードがない・スマホで取れない人はどうする?
ここが、今回の通知でいちばん具体的になった部分です。
次のような場合は、スマホでは取れません。スタッフ本人が、市区町村の窓口か郵送で、戸籍(除籍)の謄本と、電子で出すための「識別符号」を取る必要があります。
- そもそもマイナンバーカードを持っていない
- 戸籍のつながりの中に、コンピューター化される前の古い戸籍(改製原戸籍など)が含まれていて、自動ではつながらない
- 使われている文字の関係などで、今も紙で管理されている戸籍がある
- 古い除籍が紙や画像データで保管されていて、電子ではつながらない
- そのほか、電子で取れない戸籍・除籍がある
年配のスタッフや、何度か本籍を移している人は、古い戸籍が含まれている可能性が高いでしょう。本籍地と住んでいる場所が違う場合や、いくつかの市区町村にまたがって本籍を移している場合は、「広域交付」という制度などを使って、すべての戸籍を取ることが想定されています。

「識別符号」には3か月の有効期限がある
「識別符号」は、発行から3か月以内にシステムに登録しないと使えません。国のガイドラインも、スタッフに準備をお願いするときは、この3か月を踏まえて取るタイミングを伝えるよう求めています。
早めに取りすぎると切れてしまうし、ギリギリだと間に合わない。「いつ取りに行ってもらうか」を事業者側でスケジュールしておくことが、つまずかないコツです。
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スタッフが一番気にすること:「中身を見られる?」「お金は?」
戸籍の話を切り出すと、スタッフからはまずこの2つを聞かれるはずです。
戸籍の中身は、事業者には見えません
これはQ&Aではっきり答えが出ています。
内容を事業者に知られることはありません。
(こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」2026年9月29日改訂)
スタッフがシステムで直接出す場合、戸籍は国に直接届くので、離婚歴や家族関係などの中身を、経営者や同僚が見ることはありません(先ほどの「事業所を通して出す」ケースでは、事業所がその書類を預かることになるので、取り扱いには十分な注意が必要です)。また、マイナンバーカードを使っても、事業者がスタッフのマイナンバー(個人番号)を知ることもありません。
一方で、事業者は「提出したかどうか」だけはシステム上で確認できます。中身は見えないけれど、進み具合は分かる。この線引きを最初に伝えておくだけで、スタッフの身構え方はかなり変わるはずです。
取得費用は、スタッフ本人の負担
Q&Aでは、戸籍の取得費用は従事者(スタッフ)の負担とされています。
ただ、「仕事のために必要な書類なのに、自腹?」と感じるスタッフもいるでしょう。Q&A上はスタッフ負担でも、事業所として負担する・補助するという選択肢はあります。どうするかは、早めに社内ルールとして決めておくのがおすすめです。ここは就業規則や賃金の話にも関わるので、社労士と相談しながら決めるのが安心です。
2回目からは楽になる? 外国籍のスタッフは?
2回目以降
過去に提出した戸籍は、別の事業所で出したものも含めて、次からは省略できます。ただし、最新の戸籍と、前回から変更があった戸籍はその都度必要です。5年ごとの再確認のときも同じ考え方です。
外国籍のスタッフ
戸籍がないので、代わりに在留カード・住民票・パスポートの写しなどを出します。名前などが変わったことがある場合は、それを証明する書類も必要です。
いつ出すことになる?——事業所のタイプで変わります
| 対象のスタッフ | 戸籍を出すタイミング(犯罪歴確認の時期) |
|---|---|
| 新しく採用する人(共通) | 子どもと接する仕事を始めるまでに確認 |
| 認定事業者の、今いるスタッフ | 認定を受けた日から1年以内に確認 |
| 義務事業者の、今いるスタッフ | 2027年4月〜2029年12月の間に、割り振られた月に確認 |
義務事業者の場合、割り振られた申請の月の4か月前に、事業所からスタッフへ「戸籍の準備をお願いします」と伝える流れになっています。詳しいスケジュールは、こちらの記事にまとめています。

経営者が今からやっておきたい3つの準備
戸籍を出すのはスタッフ本人。でも、「出してもらえる状態」をつくるのは事業者の仕事です。
- マイナンバーカードの有無を、さりげなく確認しておく:カードは申請してすぐには受け取れません。持っていない人には、早めに作っておいてもらうと後が楽です。
- 費用負担のルールを決めておく:「自腹?」と聞かれてから考えるのではなく、先に決めて伝える。小さなことですが、スタッフの納得感が大きく違います。
- 説明の場をつくる:「性犯罪歴を確認します」「戸籍を出してください」を、紙1枚で一方的に伝えるのは避けたいところ。なぜ必要なのか、中身は見られないこと、費用のこと。これらをまとめて説明する場があるだけで、トラブルはぐっと減ります。
ちなみにQ&Aでは、就業規則に「犯罪歴の確認に応じる義務」を定めておけば、休職中のスタッフにも戸籍の提出を求められると考えられる、とされています(休職の事情に応じた配慮が必要かどうかは、事業所ごとに判断)。国のガイドラインも、就業規則に「犯罪歴の確認の手続きに対応しなければならない」旨を定めておくよう求めています。就業規則に何も書いていないと、いざというときに頼みにくくなります。このあたりから、正直ややこしくなってきます。
スタッフへの説明で起こりがちなトラブルは、こちらの記事でまとめています。

就業規則と採用プロセスの見直しについては、こちらをどうぞ。

よくある質問(FAQ)
【行政書士から一言】
制度の説明をすると、経営者の方はたいてい「うちのスタッフ、ちゃんと出してくれるかな」と心配されます。実際、つまずくのは手続きそのものより、カードがない・古い戸籍がある・期限が切れた、といった段取りの部分。スタッフ名簿とスケジュールを最初に整えておくだけで、驚くほどスムーズになります。
- Q. 日本版DBSの犯罪歴確認で、戸籍は誰が取るのですか?
-
確認を受けるスタッフ本人が取得し、原則としてこまもろうシステムを通じてこども家庭庁へ直接提出します。ただし、スタッフ本人が希望すれば事業所を通して提出することもでき、その場合、事業所は断ることができません。
- Q. マイナンバーカードがないと、犯罪歴の確認は受けられませんか?
-
受けられます。ただし、スマホで戸籍を提出することができないため、市区町村の窓口か郵送で、戸籍の謄本と識別符号を本人が取る必要があります。識別符号は発行から3か月以内に登録が必要です。
- Q. スタッフの戸籍の内容を、事業者が見ることはありますか?
-
スタッフがシステムで直接提出する場合は、ありません。戸籍は国に直接届くため、事業者に内容は知られず、事業者が確認できるのは「提出したかどうか」だけです。なお、スタッフの希望で事業所を通して提出する場合は、事業所が書類を預かることになります。
- Q. 戸籍の取得費用は誰が負担しますか?
-
国のQ&Aでは、スタッフ本人の負担とされています。事業所が負担・補助することもできるので、社内ルールとして早めに決めておくのがおすすめです。
- Q. 転職してきたスタッフは、前の職場で出した戸籍を使えますか?
-
過去に提出した戸籍は省略できます。ただし、最新の戸籍と、前回から変更があった戸籍はあらためて提出が必要です。
まとめ:戸籍を出すのはスタッフ。段取りをつくるのは事業者
- 日本版DBSの犯罪歴確認では、スタッフ本人が、生まれてから今までの戸籍を国に直接出す
- マイナンバーカード+スマホならシステム上で提出できる。ない人・古い戸籍がある人は窓口か郵送で
- 識別符号は3か月で期限切れ
- システムで直接出せば、戸籍の中身は事業者には見えない。費用はQ&A上スタッフ負担
「スタッフに何から伝えればいい?」「名簿とスケジュール、どう作る?」といったところから、行政書士と社労士のチームでお手伝いします。犯罪歴確認は、交付された確認書を見る(閲覧する)ことだけは事業者ご自身にしかできませんが、それ以外の申請手続きは行政書士がサポートできます。そのうえで、スタッフへの説明、名簿づくり、就業規則の見直し、システム登録の準備はお任せください。
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