日本版DBS認定マークは取るべき?メリット・デメリットと「あえて取らない」選択肢
「日本版DBSの認定、うちも取った方がいいんでしょうか?」
スイミングスクールや学習塾、地域のスポーツクラブ——。認定が任意の事業者の方から、最近いちばん多いのがこの質問です。
取れば保護者の信頼につながりそう。でも、準備は大変そうだし、取った後の責任も気になる。「やった方がいいのは分かるけど、うちの規模で割に合うのか」——正直、ここで迷っている方がほとんどではないでしょうか。
先にお伝えしておくと、認定は「取れば必ず得」というものではありません。 メリットも確かにありますが、見落とされがちな負担もあります。とくに重いのが、実際に「性暴力のおそれ」が起きてしまった時の現場対応。ここを知らずに認定だけ取ると、いざという時に動けません。
この記事では、認定を取るメリットとデメリットを正直に並べたうえで、「あえて取らない」という選択肢も含めて、判断の材料を整理します。イエスマンの営業トークではなく、行政書士として率直なところをお話しします。
\ 「うちは取るべき?」のご相談は無料です /
まず前提|日本版DBSの認定は「任意」。取らなくても罰則はない
日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定とは、子どもに教える・接する事業者が「性暴力を防ぐ体制を整えている」と国(こども家庭庁)から認められる仕組みです。認定を受けると、対象業務に就く人の性犯罪歴を国のシステムで確認できるようになります。
ここで大事なのが、事業者には2つのタイプがあること。
- 義務事業者…放課後等デイサービス、児童発達支援、認可保育所など。体制整備が法律上の義務。認定申請は不要だが対応は必須
- 認定事業者…学習塾、スポーツクラブ、スイミングスクール、習い事教室など。認定は任意。取るかどうかは事業者の判断
この記事の読者は、おそらく後者。取らなくても法律違反にはならず、罰則もありません。 だからこそ「取るべきか」が悩ましいわけです。
うちが義務なのか任意なのか、そもそも対象なのかが曖昧という方は、先にこちらを。
うちは対象?認定は義務?日本版DBSの対象範囲を解説
施行は2026年(令和8年)12月25日。任意とはいえ、保護者の関心は確実に高まります。「取らない」と決めるにしても、判断は早いに越したことはありません。
認定を取る5つのメリット
まずはプラスの面から。認定を取ることで得られるものを5つに整理します。
①保護者からの信頼が「見える形」になる
子どもを預ける保護者にとって、いちばんの不安は「ここのスタッフは大丈夫なのか」。認定は、その不安に国のお墨付きという形で答えられるものです。「うちはきちんと対策しています」と口で言うより、認定を受けている事実のほうが、はるかに説得力があります。
②「こまもろうマーク」で他社と差をつけられる
認定を受けた事業者は、国が定めた事業者マーク「こまもろう」を使えるようになります(こども家庭庁が令和7年12月に策定。フクロウをモチーフに「こどもをまもろう」がテーマ)。認定を受けた民間事業者が使うのは水色のマークです(学校や保育所など義務対象の事業者はピンク色を使います)。
どこに付けてよいかは、こども家庭庁が具体的に示しています(「こども性暴力防止法に関するQ&A」令和8年4月・4-12)。
| こども家庭庁が示しているもの | |
|---|---|
| 付けられる | 制服/パンフレット/募集案内/メディア広告/ウェブサイト/名刺/受付/看板/求人広告 |
| 付けられない | 宣伝・広告用のペン、クリアファイルなど、配ったあとに他の人の手に渡ってしまい、回収が難しいもの |
つまり、保護者の目に触れる場面のほとんどで「うちは認定事業者です」とアピールできるということ。同じエリアに似たような教室が並んでいるなら、マークの有無は選ばれる理由になり得ます。
なお名刺については、その事業に関わっているスタッフの分だけ。異動や退職のときは、事業者の責任で回収・廃棄する必要があります。
※マークは認定を受けた事業に限って表示できます。認定外の事業に付けると制度の信頼を損ない、不正表示には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科され得るので、使い方には注意を(根拠:法第23条・第45条)。
③採用の場面で「選ばれる事業者」になれる
これは意外と見落とされがちなメリット。求人票に認定マークを載せられれば、働く側にとっても「安心して働ける職場」の目印になります。子どもに関わる仕事を真面目に選ぶ人ほど、職場の姿勢を気にするもの。採用難の業界では、地味に効いてくるポイントです。
④施行後に慌てなくて済む
施行は2026年12月。任意とはいえ、世の中の空気が変われば「なぜ取っていないのか」と問われる場面も出てきます。早めに体制を整えておけば、周りが慌て始めてから動く事業者を尻目に、落ち着いて構えていられるわけです。
⑤体制づくりそのものが「事故を防ぐ力」になる
そして本質的なメリットがこれ。認定のために整える早期把握・相談・研修・対処規程といった仕組みは、そもそも性暴力という最悪の事態を未然に防ぐための備えです。マークが目的になりがちですが、本来の値打ちは「子どもを守る現場をつくれること」。ここを忘れないでいたいところ。
認定を取るデメリット・負担
一方で、認定には相応の負担がついてきます。ここを正直に見ておかないと、取ってから後悔します。
①申請・準備に手間がかかる
対処規程(性暴力が起きた時の対応ルール)・情報管理規程(性犯罪歴という機微な情報の扱い方のルール)の整備、研修の実施、犯罪事実確認の体制づくり——認定基準を満たすための準備は、決して軽くありません。申請手数料も1事業あたりオンライン30,000円・書面31,500円かかります(施行令第7条)。
②認定はゴールではなく「責任のスタート」
取って終わり、ではないのが認定。新しく人を雇うたびの犯罪事実確認、研修の継続、相談窓口の維持、定期的な届出——認定後もずっと続く対応があります。基準を満たさなくなれば、認定が取り消されることも。
この「申請の負担」と「認定後の責任・継続コスト」については、別記事で詳しく掘り下げています。デメリットをしっかり見極めたい方は、あわせてどうぞ。
【注意】日本版DBSの「認定」、安易に受けると危険かも? 事業者が背負う“重すぎる”責任とデメリットを徹底解説
③【最重要】「もし性暴力のおそれが起きたら」——現場対応の重さ
そして、ここがいちばん語られないのに、いちばん重いデメリットです。
認定を受けるということは、「子どもへの性暴力のおそれを把握したら、事業者として適切に対応する」と約束すること。では、実際にその”おそれ”が起きてしまったら、何をしなければならないのか。認定事業者の場合、この対応のしかたを「児童対象性暴力等対処規程」という社内ルールにあらかじめ書いておき、そのとおりに実行することが求められます。この規程を作ることが認定を受ける条件であり、認定後はそれを守る義務があります(こども性暴力防止法第20条第1項第4号・第25条)。そして、その中身がかなり重いのです。
疑いを把握した瞬間から、これだけのことが一気に動き出します。
- 初期対応…些細な情報でも真摯に受け止め、即日かつ速やかに組織内で共有。子どもへの聴取は最低限にとどめ、二次被害や記憶の汚染(何度も聴いたり誘導的に質問することで、子どもの記憶そのものが変わってしまうこと)を防ぐ配慮も要る
- 接触回避…加害が疑われる人を子どもから引き離す。自宅待機や、子どもと接しない事務作業への一時異動など。証拠隠滅のおそれがあるので、警察への相談を先に行う場面も
- 保護者への説明…被害が疑われる子の保護者へ速やかに連絡。事実が固まりきっていなくても、隠ぺい・放置と疑われないよう丁寧に説明する
- 警察・関係機関との連携…犯罪の疑いがあれば速やかに通報・相談
- 調査…防犯カメラ・記録・証拠の保全、関係者からの公正中立な聴き取り、事実の有無の評価。被害児童の衣服等は洗わず保全する、といった細かな配慮まで
- 結果を踏まえた措置…性暴力が合理的に認められれば、原則その人を対象業務(子どもに接する仕事)から外す。配置転換(別の部署・仕事への異動)・懲戒処分・内定取消しなど
文字にするだけでも、相当な重さが伝わるのではないでしょうか。しかも、これを日々の業務をこなしながら、限られた人数でやり切らなければなりません。
措置は「やりたいからやれる」ものではない——労務リスク
さらに厄介なのが、「性犯罪歴が分かったから即クビ」とはいかないこと。日本の労働法のもとでは、
- 懲戒処分は、あらかじめ就業規則に懲戒の種類と事由を定め、従業員に周知していなければできません(労働契約法第15条/フジ興産事件 最判平成15年10月10日)
- 配置転換も、就業規則に配置転換の規定があり、職種や勤務地を限定する約束がないことが前提。限定の合意があれば本人の同意が要ります
- 内定取消しは、採用の段階で前科の有無を確認していて、本人が虚偽申告していた——といった事情がないと、簡単には認められません
- 処分の前には、本人に弁明の機会(本人の言い分を聞く場)を与える必要もあります(テトラ・コミュニケーションズ事件)
つまり、就業規則や採用プロセスを事前に整えていないと、いざという時に「動きたくても動けない」。規程に「配置転換する」と書いてあっても、就業規則にその根拠がなければ絵に描いた餅です。スタッフ本人とのトラブル、不当解雇のリスク、被害を受けた子どもとその保護者への対応——板挟みのなかで、すべてを同時に背負うことになります。
なお、対応はいつも「クビか否か」の二択ではありません。軽微な不適切行為が一度あったような場合は、指導 → 研修受講命令 → 経過観察といった段階的な対応が想定されています(ガイドラインⅦ章)。だからこそ、「どの段階で何をするか」をあらかじめ決めておくことが要になります。
\ 「うちは取るべき?」のご相談は無料です /
だからこそ「実態に合った規程」と「動かせる体制」が要る
ここまで読んで、「思っていたより大変だ」と感じた方も多いはず。でも、これは認定を諦める理由ではありません。むしろ、認定の本当の価値がどこにあるかを示しています。
対処規程や情報管理規程の雛形は、国が用意しています。穴埋めと選択でそれなりの形にはなる。正直、書類を作るだけなら、そこまで難しくありません。
問題は、その規程に書いたことを、いざという時に本当に実行できるかです。
- 疑いを把握したら、誰が、何分以内に、誰へ報告するのか
- 接触回避の判断は誰がするのか。自宅待機を命じる根拠は就業規則にあるのか
- 保護者へは誰がどう説明するのか
- 配置転換や懲戒ができるよう、就業規則は整っているのか
これらが決まっていて初めて、規程は機能します。規程づくり(書類)と、体制づくり(運用できる状態)は別物。 そして難しいのは、ほぼ間違いなく後者です。
私たち「このはのこ」が「規程は雛形で作れます。でも、それを実際に動かせますか?」とお伝えしているのは、まさにここ。行政書士が規程を整え、社会保険労務士が就業規則や労務面を固める——両輪がそろって初めて、「いざ」に耐える体制になります。
規程と運用の中身、そして認定後の運用までを知りたい方へ。
日本版DBS「児童対象性暴力等対処規程」の作り方|不適切な行為の判断基準から労務管理まで完全解説
認定後の運用まで継続して伴走してほしい場合は、運用顧問プランもご用意しています。
「あえて取らない」という選択肢も、立派な判断です
ここまでメリットとデメリットを並べてきました。最後に、あえて逆のことを言います。
認定は任意。だから「取らない」という判断も、十分に合理的です。

たとえば、講師が1〜2人の小さな教室。負担とメリットを天秤にかければ、いま無理に取る必要はないかもしれません(そもそも認定の対象になるには「教える人が3人以上」という入口要件もあります/施行令第1条)。体制を回す人手が足りないのに認定だけ取っても、いざという時に動けなければ本末転倒。それなら、まずは「今すぐやるべき最低限」だけ整えて、認定は見送るという選び方もあります。
下の表は、あくまで目安です。
| 認定を取る方が向いている | 「いったん取らない」も選択肢 |
|---|---|
| 保護者向けの信頼・ブランドを重視 | ごく小規模で、保護者からの要望もまだ薄い |
| スタッフが3人以上いて体制を回せる | 教える人が1〜2人で人手が足りない |
| 採用で他社と差別化したい | 当面は採用予定がない |
| 競合が認定を取り始めている | 周囲にまだ動きがなく、様子を見たい |
| いざという時に動ける備えをしたい | まずは就業規則・誓約書など最低限から |
大事なのは、「なんとなく不安だから」で取るのでも、「面倒だから」で見送るのでもなく、メリットと負担を天秤にかけて自分で決めること。そして、その天秤の片側には「いざという時に対応しきれるか」という、今日お伝えした重さを必ず載せてください。

「取らない」と決めたとしても、就業規則・誓約書の整備、求人票への記載といった最低限の備えは、施行前の今からやっておく価値があります。これは認定の有無にかかわらず、子どもを預かる事業者として持っておきたい守りです。

よくある質問(FAQ)
- Q.認定を取らないと、罰則やペナルティはありますか?
-
任意の事業者であれば、認定を取らなくても罰則はありません。ただし放課後等デイサービスや保育所などの義務事業者は、認定申請こそ不要でも体制整備は法律上の義務です。まず自社がどちらかを対象範囲の記事で確認してください。
- Q.マーク(こまもろう)目当てで取るのは不純ですか?
-
いいえ、保護者へのアピールは正当なメリットです。ただしマークはあくまで結果。本来の値打ちは「子どもを守れる現場をつくること」にあります。マークだけ取って体制が空っぽだと、いざという時に対応できず、かえって信頼を失いかねません。
- Q.性犯罪歴が分かったら、すぐに解雇できるのですか?
-
いいえ。労働法のもとでは、就業規則に懲戒の種別・事由を定めて周知していること、本人に弁明の機会を与えることなどが必要です。まずは配置転換などを検討するのが原則で、いきなりの解雇は不当解雇と判断されるリスクがあります。だからこそ、就業規則と規程を事前に整えておくことが欠かせません。
- Q.認定を取った後、何が「ずっと」続くのですか?
-
新規採用者の犯罪事実確認、研修の継続、相談窓口の維持、定期的な届出などです。認定はゴールではなく責任のスタート。継続的な負担の詳細はデメリットの記事にまとめています。
- Q.いまは取らないと決めました。今すぐやることはありますか?
-
あります。就業規則の見直し、採用時の誓約書、求人票への記載といった最低限の備えは、認定の有無にかかわらず施行前の今からやっておくと安心です。なお、特定性犯罪前科の有無は、内定前(履歴書提出時)に誓約書・履歴書等の書面で明示的に確認するのが基本です(こども家庭庁Q&A令和8年4月・7-4)。
- Q.取るべきか、自社だけでは判断できません。
-
それが普通です。事業規模・人員体制・保護者の層・採用方針——判断の材料は事業者ごとに違います。「うちの場合は取るべきか」を一緒に整理するところから、お手伝いできます。お気軽にご相談ください。
まとめ|天秤にかけて、自分で決めるために
ポイントを整理します。
- 認定は任意。取らなくても罰則はないが、保護者の信頼・採用・こまもろうマークといったメリットがある
- デメリットの本丸は「いざ性暴力のおそれが起きた時」の現場対応の重さ。初期対応・調査・保護者対応・措置(配置転換/懲戒)が一気に押し寄せ、就業規則を整えていないと「動きたくても動けない」
- だからこそ価値があるのは、雛形で作る規程そのものより、それを実際に動かせる体制づくり
- 小規模で負担が見合わないなら、「あえて取らない」も合理的な判断。ただし就業規則・誓約書など最低限の備えは今すぐを
「うちは取るべきか、見送るべきか」——この問いに、正解は事業者ごとに違います。だからこそ、営業トークではなく、メリットも負担も正直に並べたうえで一緒に考えてくれる相手が必要なのだと思います。
私たち「このはのこ」は、行政書士と社会保険労務士が連携し、「取るかどうか」の判断から、規程づくり・就業規則の整備・いざという時に動ける体制づくりまで、ワンストップでお手伝いしています。「取った方がいい気もするけど、迷っている」——その段階のご相談こそ歓迎です。
まずは料金プラン・サービス一覧、もしくは個別サポート・無料相談へお気軽にお問い合わせください。「うちの場合、取るべきだと思いますか?」——その一言から始めましょう。
\ ご相談・お見積りは無料です /



