放課後等デイサービス・児童発達支援の日本版DBS対応|義務事業者がやるべきことを解説
「業界団体から『こども性暴力防止法への対応をお願いします』って通知が来たけど、うちは具体的に何をすればいいの?」
「ガイドラインを開いたら341ページ……正直、読む時間がない」
「認定を取るの?申請が必要?顧問の社労士に聞いても分からないと言われた」
放課後等デイサービスや児童発達支援の事業所を運営されている方から、こうした声をよく聞きます。
日本版DBSにおける義務対象事業者とは、こども性暴力防止法により犯罪事実確認や体制整備が法律上義務付けられている事業者のことです。放課後等デイサービスや児童発達支援は、この義務対象事業者に該当します。
結論からお伝えすると、認定申請は必要ありません。 ただし、施行日(2026年12月25日)から法律上の義務が自動的に発生するため、「申請しなくていい=何もしなくていい」ではありません。
- うちの事業所は本当に義務対象なのか?
- 認定事業者とは何が違うのか?
- 具体的に何を、いつまでに準備すればいいのか?
- 対応しなかったらどうなるのか?
この記事で、こうした疑問を整理します。
「うちの場合はどうなるの?」 と思ったら、まずは無料相談をご利用ください。行政書士と社労士がワンストップで対応する「このはのこ」が、体制整備をお手伝いします。
放課後等デイサービス・児童発達支援が日本版DBSの「義務対象事業者」である理由
義務対象事業者(学校設置者等)とは
こども性暴力防止法は、子どもに関わる事業者を大きく2つに分類しています。
| 分類 | 法律上の位置づけ | 対象例 | 犯罪事実確認 |
|---|---|---|---|
| 学校設置者等(義務対象) | 施行と同時に法律上の義務 | 学校、認可保育所、放デイ、児発等 | 施行日から義務 |
| 民間教育保育等事業者(認定対象) | こども家庭庁の認定を受けて義務化 | 学習塾、スポーツクラブ等 | 認定後に義務 |
学校設置者等が義務対象とされる理由は、大きく2つあります。
- 法律に基づく認可等の対象であり、事業者の範囲が明確で、問題が生じた場合の監督の仕組みが整っていること
- 行政措置によって入所先が決まる施設等は、利用者側の選択で安全確保措置が講じられていない事業者を避けることができないこと
放課後等デイサービスと児童発達支援は、児童福祉法に基づく都道府県知事の「指定」を受けている事業です。通常、これらの事業を運営するには指定が必要ですので、ほとんどの事業者が「学校設置者等」=義務対象に該当します。

なお、「指定障害児通所支援事業」には、以下の4事業が含まれます。
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 居宅訪問型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
認定事業者との違い(よくある混同ポイント)
「うちも認定を取らないといけないのでは?」と思われがちですが、放課後等デイサービス・児童発達支援(指定あり)は認定申請が不要です。学習塾やスポーツクラブとは仕組みが異なります。
| 項目 | 義務事業者(放デイ・児発等) | 認定事業者(学習塾等) |
|---|---|---|
| 認定申請 | 不要 | 必要(手数料30,000円/事業) |
| 義務の発生時期 | 施行日(2026/12/25)から自動 | 認定を受けた日から |
| 現職者の猶予期間 | 3年(2029/12/24まで) | 1年 |
| 監督機関 | こども家庭庁+所轄庁 | こども家庭庁 |
| 「こまもろう」マーク | 法定事業者用 | 認定事業者用 |
義務事業者には所轄庁(都道府県、指定都市、児童相談所設置市、中核市)による監督も加わります。これは、児童福祉法に基づく既存の監督体制に、こども性暴力防止法の監督が上乗せされる形です。
日本版DBSの全体像は下記の記事でまとめています。


日本版DBSで義務事業者に求められる措置
義務事業者が対応すべきことを順番に確認します。

① 犯罪事実確認(性犯罪歴の照会)
従事者について、特定性犯罪(子どもに対する性犯罪)の前科がないかを国に照会して確認する手続きです。
確認の期限:
| 区分 | 期限 |
|---|---|
| 新規従事者 | こどもに関わる業務を行わせるまで |
| 施行日時点の現職者 | 施行日から3年以内(2029年12月24日まで) |
| 5年ごとの再確認 | 確認日の翌日から5年経過日の属する年度の末日まで |

「業務を行わせるまで」とは、こどもと実際に接する業務を開始するまでの意味です。入社直後の座学研修やオリエンテーションの段階は含まれません。
注意したいのは、この期限が「申請する」期限ではなく、確認書を「受領して確認する」期限だという点です。確認書の発行には時間がかかります(日本国籍:2週間〜1か月、外国籍:1か月〜2か月)。余裕をもった申請をおすすめします。
急な欠員が出たときは?(いとま特例)
やむを得ない事情で業務開始までに確認が間に合わない場合、従事開始日から3か月以内に確認を行えばよいとされています。さらに、この3か月の期限内に十分な余裕をもって交付申請をしたにもかかわらず確認書が届かなかった場合は、6か月以内に延長されます。
ただし、いとま特例を使う間は、その従事者を特定性犯罪事実該当者とみなして以下の措置を講じなければなりません。
- こどもとその従事者を一対一にさせない
- 児童対象性暴力等の防止に関する研修を受講させる
- 管理職による定期的な巡回・声掛け
申請手続きのポイント:
犯罪事実確認書の交付申請は、こども性暴力防止法関連システム上でオンラインで行います。
- 事業者側 → GビズID(デジタル庁発行の事業者向けID)を取得してアカウント登録
- 従事者側 → マイナンバーカード等で本人認証してアカウント登録
日本国籍の従事者は戸籍情報の電子提出が、外国籍の従事者は在留カード・旅券等の写しなどが必要です。なお、犯罪事実確認自体に手数料はかかりません(認定申請の手数料30,000円とは別の話です)。

確認の対象となる従事者の範囲:
犯罪事実確認の対象となるかどうかは、支配性・継続性・閉鎖性の3つの要件で判断されます。
- 支配性 — こどもに対して支配的・優越的な関係にあるか
- 継続性 — 継続的にこどもに関わるか
- 閉鎖性 — こどもと閉鎖的な環境で接するか
児童指導員、保育士、指導員など、直接こどもの支援に携わる方は対象になります。事務専門の職員や送迎のみの職員は、3要件に照らして個別に判断します。
② 早期把握・相談体制の整備
児童対象性暴力等の兆候を早期に把握するための措置と、こどもや保護者が相談できる体制を整備します。
早期把握の具体例:
- 日常の観察(こどもの表情・行動の変化への気づき)
- 定期的な面談
- アンケートの実施
- 事業所内での報告ルールの明確化
相談体制:
- 事業者内の相談員・相談窓口の設置
- 外部の相談窓口の案内
すでに日常業務で「気になる子」のメモを取っている事業所も多いのではないでしょうか。それをルール化・記録化するイメージで捉えると、ゼロから作るよりハードルは下がります。
③ 犯罪事実確認の結果等を踏まえた防止措置
犯罪事実確認の結果や日常の把握を通じて、児童対象性暴力等の「おそれ」があると判断された場合に講じる措置です。ガイドラインでは「おそれ」を4つの類型に分類し、それぞれに応じた措置(配置転換、担当変更等)が示されています。
ただし、内定取消し・懲戒・解雇といった労働法制の問題が絡むため、正直なところ事業者だけで判断するのは難しい領域です。ここは顧問社労士や弁護士との連携が欠かせません。
④ 疑い事案への対応(調査・保護・支援)
児童対象性暴力等が疑われる事案が発生した場合に、初期対応・事実確認調査・被害児童の保護と支援を行う体制を整えておきます。実際に事案が起きてから「誰が何をするか」を考えていては遅いので、あらかじめ対応フローを決めておく必要があります。
⑤ 研修の実施
従事者に対して、児童対象性暴力等の防止に関する研修を実施します。
座学と演習の両方が求められ、内容としては法律の趣旨、性暴力の定義・類型、早期把握のポイント、相談対応のあり方、情報管理のルールなどが含まれます。

⑥ 情報管理措置
犯罪事実確認で得た情報は極めてセンシティブです。この情報を適正に管理するため、以下の4つの側面から措置を講じます。
| 措置区分 | 内容例 |
|---|---|
| 組織的措置 | 管理責任者の設置、取扱者の限定、取扱規程の策定 |
| 人的措置 | 取扱者への教育・研修、秘密保持の徹底 |
| 物理的措置 | 書類の施錠管理、取扱区域の限定 |
| 技術的措置 | アクセス制御、ログ管理、暗号化 |
犯罪事実確認記録等は目的外利用・第三者提供が禁止されています。万が一漏えいが発生した場合は、直ちにこども家庭庁に報告しなければなりません。

⑦ 帳簿の備付け・こども家庭庁への定期報告
犯罪事実確認の実施状況を記載した帳簿を毎年度作成し、5年間保存します。
定期報告の概要:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 毎年1回 |
| 基準日 | 毎年4月30日時点の状況 |
| 報告期限 | 毎年5月31日まで |
| 初回の報告期限 | 令和10年(2028年)5月31日 |
| 報告方法 | システム上のチェックボックス形式 |
| 報告先 | こども家庭庁 |
報告事項には、確認対象者数、実施済件数、特定性犯罪事実該当者数、いとま特例適用者数、情報管理措置の実施状況などが含まれます。
所轄庁(都道府県等)への定期報告も、同じ頻度・時期に行うことが推奨されています。
対応しないとどうなる?日本版DBSにおける義務事業者の罰則・行政処分
「面倒だから後回しに……」と思いたくなるかもしれません。ですが、対応しなかった場合のリスクは小さくありません。
犯罪事実確認を実施しない場合 → インターネット公表
犯罪事実確認を行わないまま従事者に業務を行わせると、こども家庭庁が以下の情報をインターネット等で公表します。
- 事業者の名称・所在地
- 違反のあった事業所の名称・所在地
- 違反の内容
- 違反に係る従事者の数
是正されれば公表は終了しますが、公表されている間の事業への影響は計り知れません。保護者や関係機関からの信頼に直結する問題です。
情報管理に違反した場合 → 是正命令
情報漏えい等が生じた場合、こども家庭庁から是正命令が出されることがあります。命令を受けると、措置が完了するまで犯罪事実確認書が交付されなくなります。つまり、新たな従事者の採用に支障が出ます。
帳簿不備・報告拒否等 → 罰金
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 帳簿の不備・虚偽記載・不保存 | 50万円以下の罰金 |
| 報告徴収・立入検査の拒否・虚偽報告 | 50万円以下の罰金 |
| 犯罪事実確認書の不正取得 | 1年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 |
| 犯罪事実確認情報の不正目的提供 | 2年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 |
いずれも両罰規定が適用され、行為者個人だけでなく法人にも罰金刑が科されます。
「何から手をつければいいか分からない」 ——そんなときは、専門家に相談してみてください。「このはのこ」では、義務事業者に特化した体制整備サポートをご用意しています。
放課後等デイサービス・児童発達支援で特に注意すべきポイント
顧問社労士との役割分担
放デイや児発の事業所では、すでに顧問社労士がいらっしゃるケースが多いと思います。日本版DBSへの対応では、以下のように専門家ごとの役割を整理しておくとスムーズです。
| 対応事項 | 主な担当 |
|---|---|
| 就業規則へのDBS関連条項追加 | 顧問社労士(独占業務) |
| 採用プロセスの見直し(誓約書・求人票) | 顧問社労士 |
| 児童対象性暴力等対処規程の策定 | 行政書士 |
| 情報管理規程の策定 | 行政書士 |
| 犯罪事実確認の申請サポート | 行政書士 |
| 所轄庁・こども家庭庁への定期報告 | 行政書士 |
| 早期把握・相談体制の設計 | 事業者+専門家の協働 |
| 研修の企画・実施 | 事業者+専門家の協働 |
大切なポイントがあります。対処規程や情報管理規程の雛形は、こども家庭庁がほぼ穴埋め式で用意しています(ガイドライン別紙1・別紙8〜10)。規程を「作る」こと自体は、正直それほど難しくありません。
本当に難しいのは、「規程に書いたことを、実際に運用できる状態にすること」です。
早期把握の仕組みをどう日常業務に組み込むか。相談窓口を誰がどう担当するか。情報管理の物理的・技術的措置をどう整えるか。——こうした体制づくりが、日本版DBS対応の本質です。

※犯罪事実確認の申請は、事業者と従事者がオンラインシステム上で共同で行うものです。第三者による代行の可否については、現時点で明確な運用が示されていません。「このはのこ」では手続きのご案内・準備支援として「サポート」の形でお手伝いしています。
既存の運営基準・指定基準との関係
放課後等デイサービスや児童発達支援は、すでに児童福祉法に基づく指定基準のもとで運営されています。虐待防止の取組みなど重複する部分もありますが、犯罪事実確認や情報管理措置など、新たに対応が必要な事項が相当数あります。
こども性暴力防止法に基づく監督(こども家庭庁)が既存の業法(児童福祉法)に基づく監督に上乗せされる形になりますので、所轄庁(都道府県等)の動向にも注意が必要です。
よくある質問(FAQ)——放課後等デイサービス・児童発達支援の日本版DBS対応
- Q.義務事業者と認定事業者は何が違うのですか?
-
義務事業者は、法律の施行と同時に自動的に義務が発生します。認定申請は不要です。一方、認定事業者(学習塾やスポーツクラブ等)は、こども家庭庁の認定を受けて初めて義務が発生します。放デイ・児発は、指定を受けている事業者であれば義務事業者です。
- Q.犯罪事実確認は事業者が直接行うのですか?
-
はい。犯罪事実確認書の交付申請は、事業者がGビズIDを使ってオンラインシステム上で行います。従事者本人もマイナンバーカード等で本人認証し、戸籍情報等を登録します。犯罪事実確認自体に手数料はかかりません。
- Q.今いる従業員も全員確認が必要ですか?
-
はい。施行日(2026年12月25日)時点の現職者も対象です。ただし3年間の猶予があり、2029年12月24日までに確認を完了させれば問題ありません。新規採用者は、原則としてこどもに関わる業務を行わせるまでに確認を終える必要があります。
- Q.規程の雛形はありますか?自分で作れますか?
-
こども家庭庁がガイドラインの別紙として雛形を公表しています。対処規程は別紙1、情報管理規程は別紙8〜10(事業規模別3パターン)です。ほぼ穴埋め式で、事業所の情報を記入すれば形は整います。ただし、規程を作っただけでは足りず、規程に書いた内容を実際に運用できる体制を整備することが求められています。
- Q.いつまでに何を準備すればいいですか?
-
施行日は2026年12月25日ですが、就業規則の整備・採用時の誓約書の導入・求人票への記載は施行前の今すぐ着手すべきとされています。GビズIDの取得も早めに済ませておくと安心です。
まとめ
放課後等デイサービス・児童発達支援事業者は、こども性暴力防止法における義務対象事業者です。
- 認定申請は不要だが、施行日(2026年12月25日)から法律上の義務が自動的に発生する
- 犯罪事実確認、早期把握・相談体制、防止措置、研修、情報管理、帳簿・定期報告が必要
- 現職者には3年の猶予があるが、新規採用者は原則業務開始までに確認完了
- 対応しない場合、事業者名のインターネット公表や罰金のリスクがある
- 就業規則・誓約書・求人票の整備は今すぐ着手すべき
「ガイドライン341ページを全部読む必要はありません。でも、やるべきことは確実にあります。」
日本版DBSへの対応で「うちの場合はどうすればいい?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。行政書士と社労士がワンストップで対応する「このはのこ」が、規程づくりから体制整備、定期報告まで、一緒に進めます。
